“裸足で走る”という非日常の体験をした。尤も、走るというにはおこがましい脚運びではあったが5kmの山道を踏みしめた。
そしてその走った後の感覚が不思議で、曰く言い難いものだった。且つ、そのあと何日もその余韻が残った。それは筋肉痛とかそういう物理的な名残ではなく、身体バランスへ向けられる意識だった。
ただ裸足で走っただけなのに…。
久しぶりの友人から「元気?ベアフットマラソンに申し込んじゃった、、(;´∀`)」とメールが届いた。友人は数年前まで一緒によくランニング大会に出ていたラン友。今回はうちの近くで開催される大会だったので連絡をくれたのだと思い「応援に行くよー!そのあとお疲れ乾杯までやろー!」と返信をした。すると、「いや、一緒に走ろうよ、申し込み期限今週いっぱいだよ」と…。
「え!?わしも??しかもベアフット(裸足)…。」いやぁ無理でしょうと、「痛みのあるウオノメがあるからアタシは厳しいよ~」と一度断った。
実際痛いウオノメもあるが、ここ数年ランニングはほとんどしていない。山登り、ハイキングだけで、走る筋肉は全てロストしている。そして太り過ぎた。
何年か前まではランニングがちょっとした趣味だった。多い時は年に14回ハーフマラソンの大会に出て、初級者トレイルランやビーチラン、フルマラソンの林道走りなど、結構いろんな大会に出ていた。
ランニングかぁ…。
しかし少し調べると、この大会、裸足であるため制限時間がかなり長く設けられていた。しかも一番短い距離は5km。歩いてもキロ15分で1時間15分。制限時間はもっと長い。
出てもいいか…。全部歩いても1時間ちょっとくらいでゴールは出来るだろう…。
↑このあとサンダルを脱いで裸足に
↑素敵なお兄さま達。大会の常連さん
実際走り終えたタイムは1時間13分超え。普通に歩くよりも時間がかかった。元々このコースは歩いたこともあり、道の様子も知っている。しかし、裸足という未知の領域では想定が当たらないw。
土の上の小石くらいは大したことはない。落ちたサクランボの種だってチクチク程度である。最大の難所は、大粒の砂利の敷き詰められた箇所だった。尖がった足つぼマット…拷問だった。
しかし、裸足ランナーさん達は何もないようにそこを走り抜けていく。道がまるで舗装路であるかのように、また靴を履いているかのように普通なのだ。
スタート前に、友人を介して大会の常連さんたちのお話を聞いた。かいつまんで捉えたところでは「自分の身体の使い方が分かってくる」ということだった。私の片足のウオノメも、身体のバランスが自分で整えられたら治るかもしれないね、と。皆さん裸足をすごく楽しんでいて、その上自らの身体への意識が研ぎ澄まされているようで、印象的だった。砂利の上を颯爽と走っていけるのにも何か納得できる雰囲気があった。
大会が終了し、友人と二人でカールヴァ―ン本店まで歩いた。
足が熱い。そしてなぜか気持ちいい気がする。もちろん久々に使った筋肉の痛みも感じてはいたが、それ以上に妙な心地よさがあった。実は加えて妙にテンションも上がっていた。これは大会中のランナー皆さんのハイテンションが移ったせいかもしれないがw、ワクワクがとまらないのだ。
何にワクワクしていたのだろう。今も分からないが…。
5km以上は無理だが、来年もまた出たい。そう思いながらルンルンで歩いた。
カールヴァ―ンに着き、先に到着していた家族と合流し乾杯。いわずもがな運動後の一杯は沁みるw。
友人から面白い話を聞いた。ちなみに彼はここ数年「マンサンダル」というサンダルを履いて走っている。きっかけはシューズを変えようとも治らない脚の痛みからだったそう。
「フルマラソンをマンサンダルで走ると、最期30kmを超えての無理が効かなくなる。シューズなら疲れていても蹴りだせる脚が、マンサンダルでは蹴りだせない。淡々と足を進めるだけになる。その代わり、翌日の筋肉痛はない。」彼は現在、脚の痛みには悩まされていないらしい。
マンサンダルは、裸足の状態に近いかたちで走らせてくれる”纏うサンダル“。裸足の理想を追求したものだ。これもまた印象に残った。
楽しいひと時も終え、解散した。
それからしばらく今回の裸足での経験、友人の話、マンサンダルのことが頭から離れなかった。そしていろいろ推察した。
身体は本来、自らの身体の使い方を一番よく知っているのかもしれない。生まれつきの骨格のアンバランスさや、身体の状況(体重や筋肉量)、そういうのを整えながら最大のパフォーマンスをする能力を持ち合わせている。それがシューズや様々な被服に慣れてしまったことで、その力の発揮の仕方を忘れているような…。さらに言えば、自分の身体の在り方を捉える能力すら失っているような…。そんな風に推測出来た。あっているかどうかは知らんが…w。
乗馬をしていて自分の身体の使い方が自分で分かっていないことが多々ある。自分では足の真ん中(中指)に重心をかけて鐙にのっているつもりでも、インストラクターの先生から見れば小指にまだよっていたり。肩・尾骶骨・かかとが一直線上にあるのを目指しているのに、肩が前傾していたり…。他にも言い出したらキリがないほどある。最近は力加減を細かく操作できない(1~10の段階があるとしたら、1の次は2を出したいのに8が出てしまう)、つまりは雑!なことに気づき、どうしたもんかと思っていた。
裸足、良いかもしれない。
それと同時にヨガのことも思い出した。昔、親友の勧めでしばらくやっていたことがある。ヨガをしているときに毎度驚かされたのは「こんなところにちっちゃな筋肉があるのか!や、こんなところの神経が反応するんだぁ」みたいな気づきだった。
馬のためにもっと身体操作感覚を研ぎ澄ませたいと思っていたところだった。そんな時に誘われた裸足ラン。ちょうど提起されていた問題と向き合う良い機会となった。
裸足やヨガ、生活に組み込んでみたい。
独学でやることに一抹の不安はあるが…。