(我が殿の肖像権は私が握っております)
「ハリス島」
ハリス島は、スコットランド本島の西側・ヘブリディーズ諸島に属する小さな島。ハリス島と聞いてピンとくる人は少ないが、織物の”ハリスツイード”は知る人も多い。島の産業のひとつはこの紡績だが、他の産業といえば観光くらい。この小さな島の人たちは、働くといえばスコットランド本島に出ることが多かった。
2015年、この島の雇用を作り出すことというシンプルな発想から生まれたのが”ハリス蒸留所”だった。「島の魅力をひとつのボトルの中に表現する」、そのお酒は世界中の人々の心を掴むに違いないというコンセプトのもと、スピリッツ造りが始まった。
蒸留所が最初に造った蒸留酒はジン。注目すべきは、使用するボタニカル(花やハーブ・スパイスなど、香味になる材料)の中に「昆布」を使用していることだ。ジンの爽やかな酒質に奥行きを与え、伸びやかな旨味を作り出している。刺身とともに常温の”生(ストレート)”で楽しめるジンだ。そんじょそこらのローカルのちょっとした話題作りのためにポッと造られたジンではない。本当に美味いジンだ。
島の心(=スピリッツ)とも言える、この蒸留所から生まれた”ハリスジン”に、実際に私も魅了された一人であり、蒸留所設立から3年後の2018年にこの島を訪ねた。このHPのトップ動画やバックグラウンドの砂の画像は、この時ハリス島で撮ったものだ。
驚きの連続だった。小さな島のはずなのに、思っていたより遥かにハリス島のスケールは大きかった。限りなく続く岩肌の荒野があれば、オフホワイトの砂浜が静かに続くビーチもある。グレンコーのような迫り立つ山々でなく、またスカイ島の荒々しい山でもない、大きく穏やかな山稜が腰を据え全体としてゆるぎない存在を見せつけてくる。黒く深く広がるピートの大地は生まれたての地球さえ思わせた。
蒸留所そっちのけ⁉で、ハリス島の大地にぞっこんになってしまった(笑
やっと、ブログタイトルの話になる。
そんなハリス蒸留所が、昨年発表したのがTHE HARRIS TWEED PROJECTだった。
目に入ったのはとにかく美しすぎるジャケットだった。ベルベット地の美しいブルーの襟、グレー基調のツイードにはこれまたブルーが織り込まれ、ボタンホールも鮮やかなブルーであしらわれている。一目でハリス蒸留所の在り方が体現されていると分かる。
ハリスツイードとハリス蒸留所のコラボレーションはそんなに驚くことでもないと思ったが、とにかく!美しいツイードジャケットにひとめぼれ(♥ω♥!)。
しかしその発表によくよく目を通していくと、すごいプロジェクトじゃないかっ!
まず、ツイード地について。この織のデザインは、なんと島の14歳の少年によってデザインされたという。ハリス蒸留所は、今日まで続くツイード伝統の再発見!プロジェクトの一環として、島の小中学生から「蒸留所デザイン」のツイードをコンペ形式で募集したのだ。ただの募集ではなく、ハリスツイードの諸団体や島の教育委員会などの協力のもと、きちんとツイード作りの一連のワークショップが行われてのことである。若い世代への伝統の継承も考えられた教育への取り組み。素晴らしい。
ハリス蒸留所の応接室。壁にツイードの糸がディスプレイされている。
蒸留所見学がスタートする大広間。背中の壁にも、テーブルの上にもツイード糸がみえる。
そして、このツイード地を使いジャケットをデザインしたのは、Judy R Clark。アレキサンダーマックイーンで活躍したデザイナーで、自身のルーツもまたこの島にある。現在はエジンバラに工房を置き、ハリスツイードを用いたコレクションも製作している。
さらに、彼女がデザインしたジャケットに、ルイス島で活躍するAlison MacDonaldによる刺繍がローズゴールドの美しい糸で施される。
この蒸留所ツイードジャケットの概要は以下だ。
・ジュディクラークによる唯一無二のデザイン
・100%ハリス蒸留所デザインツイードから製作
・ツイードはStephen Passmoreによってハリス島で手織り
・全てスコットランド内で製作
・襟元と袖口はブルーのベルベット地
・コッパ―色のボタンを際立たせるハリスジンブルーのボタンホールステッチ
・‘Esse Quam Videri’という蒸留所のモットーを襟裏にローズゴールドの糸で刺繍 ※下記参照
・ジャケットの裏地もハリスジンブルーのサテン地を使用
・コッパ―色のハンガーと、特別ブックレット、このジャケットのための包み紙にて梱包し、届けられる
※‘Esse Quam Videri’とはラテン語で to be, rather than it seems と英訳される。その意味は、it is better to be something instead of pretending to be something で、私の拙い訳でいえば「何かとしてあろうとしているよりも、実質をともなった在り方を」といったところだろうか。見かけよりも、内実ともなった自らの在り方を追求しようという言葉だと理解した。
購入するしかない!
受注生産だということで、すぐに問い合わせをした。一番問題だったのはサイズ感で、特に我が殿はUKサイズでもデザインによって合うあわないが顕著。やり取りをしていると、身体の測定をデザイナーにまわして、サイズを考えてくれると提案があった。もちろん、届いたジャケットのサイズはバッチリだった(^’^)
何度かのやり取りの後、注文。日本に到着するのはおおよそ4か月後ほど。楽しみに待っていると、途中届いたのは、生地のサンプルを入れた受注確認書。このプロジェクトを表した可愛らしい封書にテンション⤴上がりましたw。
↑少し照明が暗いのでわかりづらいが、ハリスジンブルーが鮮やかで、本当に美しいジャケット。いい大人がキャッキャはしゃいで着用。写真は秩父のHighlander Inn Chichibuにて、店長の福井くんに撮ってもらいました(たくさんw)。写真、上手♪
もうデザインについてはいうことも無く、完璧。縫製もしっかりしていて、なによりも暖かい!ツイード地ってこんなにあったかだったっけ⁉もうひとつ持っているツイード織りのジャケットよりも暖かい。これもハリスツイードならではなのかもしれない。
このジャケットを着て、馬にも乗った。しかも阿蘇の壮大な大地で。暖かさも抜群だし、坂を駆け上がっても全く問題ないほど着用していて気持ちよかった。
2021年、一番♥の買い物となった。ちなみに2020年の一番の買い物は鞍であるw
長く長く着用していきたい。
それは暗にこれ以上太ってはいけないことも示している。