乗馬に行く前から緊張して、乗馬クラブに近づくと恐怖心からの動悸が止まらない…。トラウマ期の私はこんな感じだった。
不思議なもので、うちの殿は落馬を3回ほどしているが、一度も、微塵も、怖いと思ったことはないらしい。私なんかは一度の落馬で、しばらくは苦痛の乗馬ライフとなったというのに(´-∀-`;)
落馬をしたのが2019年6月。その年の師走、最後の乗馬レッスン。京都出身のファンキーな指導員さんに「何か来年の乗馬の目標とかありますか?」と尋ねられ、「来年は馬に乗っていて楽しい、と思えるようになりたい」と思わず答えた。12月の終わりになっても、それほど落馬の恐怖を引きづっていたのだ。
今回は落馬の思い出話、完結編である。過去は以下に↓
落馬をして、2か月休養をし、9月にレッスンに復帰した。元のレベルのクラスに戻ったが、自分でも想像できなかった恐怖感に、身体がガチガチになりついていくことができなかった。なので、本当に一番下のクラスから慣らし運転でスタート。すぐに元のクラスまで戻ることが出来たが、10月は馬に乗ることが精神的苦痛となり、2回しか行くことが出来なかった。
「自分はダメな人間なんだ」。馬に乗ると、こう考えるに至ってしまう”負のスパイラル”に陥ってしまっていた。今考えればかなり自意識過剰な反応であろうが、思考の順序は次のような感じだ。
馬に乗れない→指導員からの指摘に人間性を否定されているように感じられる→馬を理解できていない自らを責める→馬に申し訳ない→こんな人間だから普通の社会でも生きづらいんだと感じる→自分はダメな人間なんだ……。
(笑)
なぜここまでの思考になってしまったかw。今となっては滑稽なほどであるが、この頃のアタシは本当にこう思っていて辛かった。毎回レッスン後の指導員の言葉に涙していた(;_;) 2月までそれは続いていた。それでも「馬が好き」という気持ちだけが強くあり、なんとなく乗馬を続けられていた。
そして今、私は完全にこのトラウマを克服している。ゆっくりとではあるが、そう言い切れるまでになった。
私のトラウマの克服には、3つのフェーズがある。
- 叔父とおじの愛馬「ローラ」との関係に触れて
- 馬についてとにかく学ぼうとしたこと―馬の文献を読む&グラウンドワークを学ぶ
- 身体能力の変化
2020年2月、久しぶりに渡嘉敷の叔父のところに遊びにいった。叔父は数年前から中半種の愛馬「ローラ」を飼っている(トップの画像)。手作りの可愛い三角屋根馬房に、丸馬場と長馬場を合わせたような鍵穴の形をした広い馬場を整え、とにかく愛情たっぷりに可愛がっていた。もちろん騎乗も出来る。ただし、叔父は馬を飼うのも初めてだったし、馬に乗ることも飼ってからはじめてやってみたことで、すべてが我流だった。速歩も駈歩の出し方も無茶苦茶で、叔父がワチャワチャっと「出れー」みたいな動きをしたり声を出したりすると出るのである。で、叔父は「なんで出るのかや~⁉ 覚えたんだろうけど、理由は分からんさー」と言う(笑)
その自由さを見ていて、なぜか心が解放された気がした。叔父とローラの信頼関係が生み出していたハーモニーみたいなものに、こちらもハッピーにさせてもらった。叔父と一緒にローラの世話をし(一緒に馬体によってくる刺し蠅をバチンバチン叩き落したりw)、ちょっと乗せてもらったりした。そしてこちらに帰った時には、頭の中を曇らせていたものがなくなっていた。これが第一のフェーズである。
それから、馬に乗ることが気持ち的に楽になった。いい意味で深く考えすぎないようになった。ただ矛盾するようだが、もっと馬のことを知りたいと思うようになった。馬がなぜこう動くのか、こう反応するのか、またはこう反抗するのか(笑)。個々の馬がどういう思考をもっているか。その思考は、どういう性格に由来するのか、云々…と。漠然と触れ合っていた段階よりも、よりロジカルに考えてみたいと思うようになっていた。
2021年3月、ものすごい二日酔いだけどw、殿の誕生日だったのでドライブしようと訪ねたのが”ときがわホースケアガーデン”。小さな温かい養老牧場で、スタッフの方とお話をさせてもらうと同じ乗馬クラブに通う方が何人かお手伝いをされているという。そして皆さん、オーナーの鈴木さんの「馬講座」で馬のことを学ばれていると。乗馬クラブでは教わることのできないグラウンドワークや、馬の手入れ、健康管理など学びたいことをヒアリングしてくれ、講座を組んでくれるという。
鈴木さんの馬講座を受講した。知れば腑に落ちていくことがたくさんあった。また同時に反省することもたくさんあったのだが…w。この受講以後、私と馬との関わりは大きく変わった。なにも今どの馬ともうまく付き合えてるなんて、そんなことではないし、そんなことはない(;´д`)w。ただ、以前よりも圧倒的に馬と心を合わせられる瞬間を多く感じられるようになった。鈴木さんの講座を受けた上で馬の文献を読むと、尚、理解できることも増えた。それがまた馬に還元され、馬から教えてもらえることも増えた。と、いい循環を持てるようになった。
同じく、宮田朋典さんのセミナーや、持田弘之さんのセミナー、藤本美芽さんのセミナーなどを通し、馬とお付き合いするとはどういうことなのか、大きな軸を教えていただいた。そしてたくさんのTipも教えてもらった。接する馬と、互いに了承が得られる範囲でそれらのTipも使っている。(互いに了承が得られるかどうかを見極めることも重要!ただ単に教わったコワザを使うのはただのエゴであり乱暴である)これが、第二のフェーズだ。
最後はシンプルに、唐突な馬の動きに対応できる身体能力がついてきたということ。乗馬をはじめて3年、ある程度の馬の急激な動きには驚かなくもなったし、身体をついていかせることができるようになったなぁと思っている。その上で、「落ちる時は落ちる」ということも心構えができるようになった。心に余裕ができたということである。これはかなり大きい。しかし、実は前段として”心を合わせる”というような第二のフェーズを経たうえで馬も余裕を感じてくれているのだ。だから馬自身が、小さなことでは驚かないし、冷静にその場を凌いでくれるような心持でいてくれようになったのだと理解している。これが第三のフェーズ。
こう書いてきて、よっぽど馬についての見識や経験を深めたかと言えばそうではなく、まだまだ学びの途中である。
ただ明確に、わたしはこの方向で馬と接してくることができたから”落馬のトラウマ”から抜けることが出来たのだ。まずはきっかけを作ってくれた叔父に感謝。実際に馬とたくさんの触れ合いと学びをもたらせてくれた”ときがわホースケアガーデン”の馬達と鈴木さんに感謝。そして、いつもこんな私を乗せてくれる乗馬クラブのたくさんの馬たちに感謝である。